国際学術誌「New Phytologist」にオンライン掲載されました: 木の中にガスパイプライン?―ガス漏れの場所を特定せよ!―

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メタンガスは空気中にもごくわずかに存在する気体で、地球温暖化に強く影響します。空気中のメタンの発生源の一つが湿地です。近年、湿地に自生する樹木から、これまで知られていなかったほどの大量のメタンが空気中へと放出されているという報告が相次ぎ、植物学や気候科学の分野で大きな論争が巻き起こっています。本当に樹木からメタンが出ているのでしょうか?出ているならば、どのようなメカニズムでしょうか?

 高橋けんし 生存圏研究所准教授、坂部綾香 白眉センター特定助教、東若菜 神戸大学助教、伊藤雅之 兵庫県立大学准教授らの研究グループは、先進的な大気環境の分析技術を樹木の計測へと応用することにより、湿地性樹木の一つであるハンノキの幹から大量のメタンが放出されていることを突き止めました。また、春から秋にかけての葉っぱがついている着葉期間には、メタンの放出量が昼間に増え、夜間に減るという、不思議な日変化パターンを示すことも明らかにしました。さらに、クライオ走査型電子顕微鏡(cryo-SEM) 法とよばれる手法を用いて、ハンノキの根を注意深く観察したところ、細い根の細胞や細胞組織の間に、水がないミクロな“隙間”があることを発見しました。この隙間は、根の中でまるでガスパイプラインのような役割を果たし、根から幹へとメタンガスが輸送される道筋の一つになっていると考えられます。

 本研究成果は、2022年7月15日に、国際学術誌「New Phytologist」にオンライン掲載されました。